無駄な検討を止めるために必要なもの

Posted 7 months ago by yoosee.
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かなり間が空いてしまったが、生産性を上げたいならまずその「検討」を止めよ の続きとして、ならばどうやったら「検討」を止められるのかを考えてみたい。

基本的に検討はなんらかの判断をするために行うものなので、「判断」が行われた時点で検討が終了する。であれば判断はどうしたら迅速に行うことができるのか。それに必要な3つの要素は「情報」「専門知識」「裁量」である。判断をするために必要な材料が情報、判断をするための能力が専門知識、組織の中で判断を承認させるための権限が裁量、という形になる。

Decision Making


大事なのは、この「情報」「専門知識」「裁量」を同一人物が持ち合わせること。外からもらえる情報はともかく、専門知識と裁量は同じ人物の中に同居している必要がある。つまり無駄な検討を止めて迅速な判断を行うには裁量を持つ意思決定者が十分な専門知識を持っている必要がある。

多くの場合の判断は未来に対して行うものだ。未来は未知なものであり、未来を判断する情報が全て揃っていることはまずない。そうした状況でも判断するために必要なのが専門知識だ。専門知識によって「明確に劣る選択肢」や「非現実的な選択肢」は即座に破棄できるし、追加検討に何が必要なのかも指示として明確に示すことができる。

日本に限らずどの国でも上級管理職になるほど現場に近い専門知識からは距離が開いてしまうものではある。しかしながら体系だった専門知識を更新するのは不可能ではないし、事実海外の管理者はかなりの量を勉強に費やしている。そもそも専門知識なしに判断するのは非常に困難なのだから、専門知識は必要に迫られて身に着けるものなのだ。

企業における専門職経営層の重要性

多くの国の海外企業では昨今、C-タイトルの種類が増えている。C-タイトルは CEO、Chief Executive Officer (最高経営責任者) のように、ある業務領域での経営トップを示す呼称だが、旧来からある CEO, CFO, CTO, CIO, COO など以外にも、最近は CSO (Strategic), CMO (Marketing), CCO (Communication), CHRO (Human Resource) などなど、C 付きの役職が増えている。

これは内部の昇格や外部からよい人を取るために待遇と見栄えの良い新しいポジションを作っている事情の企業もあろうが、本質的には経営層レベルに業務領域に応じた専門職が必要になっているという事でもある。各業務の専門性が深まってきており、一人の経営者が全ての専門知識を身に着けて意思決定するのが難しくなっているのだ。

専門経営職の必要性は CFO が分かりやすいかもしれない。CFO を置いている企業で、社長や副社長がCFOを兼ねることはあまりない(もちろんCFO専任の副社長はいるだろうが)。CFOは財務や会計に関するスペシャリストであり、その道の専門知識とキャリアが必要だと認識されているからだ。日本でも恐らく財務担当の上級職は財務畑のキャリアを積んできた人が多いだろう。ところがこれが CTO や CIO になるとそうした認識が薄くなり、副社長等がそうしたCタイトルを数多く兼務している企業もある。

現代のビジネスにおいて専門知識は深化を続けているが、そこには企業経営にITシステムが浸透してきたことが関係している。ITシステムにより、今まで個人の暗黙知やノウハウで行われてきた様々な業務、例えばマーケティング、人事、財務、会計、営業、等々がシステムに実装されることにより形式知として可視化されたのだ。形式知はこれまでのように人間の転職や退職によって消滅せず、よりよい方法を模索しつつ深化していく。この深化についていくために、人間側も個別の業務領域ごとの専門知識を深める必要が高まってきているのだ。

ここでの専門知識とは「20年前はこうだった」や「私の経験からいうと」などという不確かなものではない。専門知識は形式知であり、体系だった学問であり、大勢が業務の中で知識と経験を積み上げたプラクティスの上澄みであり、業界で用いられる標準的なフレームワークである。これは業務経験があれば必ずしも身につくものでもなく、自発的に体系を学ぶことが必要なものが多い。業務からは業務で扱っている事象しか学べないからだ。

特に IT で言えば、情報技術に関する「基礎技術」と共に、また業界の「ベストプラクティス」と呼ばれる知識のライブラリを踏まえることが多い。つまり IT に関する判断には、自身のビジネス現場を理解しつつ、ITが適用される業務ドメインに対して、業界標準に照らしてベンチマークするだけの知識と手法が必要になる。

これは CIO についてのみの話ではなく、他の Cタイトルについてはこの条件が反転する。つまり今の意思決定レベルの人たちは、自身が担当する業務領域の専門知識に加えて、それが駆動するITシステムについての知識もある程度必要になるという事だ。

日本企業における課題としての「プロの不在」

翻って日本企業を見ると、流石に最近はジョブ型だの言われ始めていて専門性の高いキャリアも効力されるようになってきているが、相変わらずジェネラリスト育成を主眼においた定期人事異動をしている企業も少なくないのではなかろうか。まして残念なことに、専門知識のない管理職は再生産される。何故ならいま管理職をやっている専門知識のない人たちは、専門知識がある人をきちんと評価できないからだ。

日本企業、特に大企業における謎の風習に、人事異動時の挨拶がある。「全く新しい業務なので慣れるまで皆さんにご迷惑をおかけするかもしれませんが」というあれだ。若手の担当社員ならともかく、課長職や部長職、下手するとそれ以上の経営層に近い職ですらこうした挨拶を聞くことがある。謙遜されているならばまだしも、実際に未経験の業種に移動させられる管理職は決して少なくないだろう。

これはつまり、その分野の素人が意思決定の責任を負わされているという事だ。別にそうした人たちを責めたいわけではない。彼ら・彼女らもつまるところ制度の被害者なのだから。しかしそれ以上に悲劇なのは、そうした管理職の下で働く人たちだ。そうした人たちは、つまるところ前出の「意味のない利益に結び付かない無限の検討」を続けることになるのだから。

ここから脱する手段は明らかだ。意思決定者に専門知識を持たせる。そのためには企業としてのキャリアパスを見直す必要もあるだろう。意思決定者層に向けた教育プログラムも見直すべきだ。また手っ取り早く会社を変えることを考えるならば最初の経営層専門職は外部から雇用することも必要だろう。専門性のない上司は専門性の高い部下を評価できないので、トップ層に専門職がいることは非常に重要になる。

まとめ

無駄な検討を止めるため、迅速に意思決定を行うためには、「情報」「専門知識」「裁量」が意思決定者に集中することが望ましい。このなかでも外部から与えるのが難しく、意思決定の礎になるのはその判断領域に関わる「専門知識」である。

業務の専門性が深化した現代では、専門知識なしに意思決定をするのはほぼ不可能になっている。特に日本の大企業がよくやるようなジェネラリスト育成、専門性のない人を上級管理職として配属するような人事はやめるべきだ。またとっかかりを作るためにも経営レベルの専門職者が存在すること、いないなら外部から採ることが必要になる。

 

ダイエット成功のコツはカロリー収支赤字の習慣化

Posted over 1 year ago by yoosee.
  life health

2019年の8月から12月にかけてダイエットを実践してそこそこ成功したのでその記録。成果としては 5か月間で体重 6 kg / 体脂肪率 7% の減少。 筋量を殆ど落とさずに脂肪を落とすことができた のがポイント。ズボンもウェストサイズが緩くなった。

pig swimming photo

やり方は基本的に食事制限と筋トレ。消費カロリーが約2,200kcal/日に対して摂取カロリーがざっくり1,600kcal/日ほどで、カロリー収支を赤字にするのが全てのダイエットの大原則だ。

  • 朝食は牛乳200ml ⁺ プロテイン (約200kcal)
  • 昼食はお握り1個とサラダチキンバーにドリンク (約400kcal)
  • 夕食は普通に食べるが炭水化物(主にお米)は半分以下にする (約800kcal)
  • 間食ほどほど (約200kcal)

間食を辞めればもっと早いベース、ないし朝昼をもう少し食べられたんだけど、辞められなかったので割り切ってその分は食事から減らす。

これにあわせて運動・消費は以下の通り。

  • 1日8,000歩以上(行き帰りの1駅分追加で歩いた)
  • Home Workout の運動を1日1セット (上半身・下半身・腹筋をローテーション)
  • プールで主にクロールを週に1 or 2回、平均 1.5km / 回

消費カロリーは 2200kcal 程度だとするとカロリー収支が1日マイナス 600 - 700kcal くらいあるが、実際にはあまり歩かない日やランチを外食している日、飲み会などで夕食のカロリーが多い日がある。30日間で計算すると、脂肪重量減が月に 1.5kg 程度なので逆算して 7200 x 1.5 = 11,000kcal 前後、1日当たりで400kcal程度の計算になる。ここでは脂肪の1㎏あたりのカロリーを7200kcalとする。

歩行以外の運動は消費カロリーの収支を改善するよりも、筋量の維持・向上を目的としている。筋量・代謝量的には下半身が支配的なので足の筋肉を鍛えるのがおすすめだが、嗜好としては上半身もそれなりには鍛えたい。

余談だがプールは筋量のみでなく心肺機能によく効くので大変よろしい。週1,2回程度でも以前に比べて明らかに心配能力が向上して、多少走っても息切れもしなくなったし風邪をひきにくくなった気もする。なにより 1.5km だと1時間もかからない運動なのに充実感が高い。設備がないとできないのが難点だが、都内だと公共プールやジムなどそれなりに見つかる。

ダイエットを成功させるために必要な3つのこと

という訳で一応きちんと成功したのでえらそうに書いておくが、ダイエットを行う上で大事なことは3点。「カロリー収支の赤字化」「筋肉の維持」「習慣化」だ。

1. カロリーの収支を赤字にする(ために食事を減らす)

ダイエットに必須な条件は消費カロリーが摂取カロリーを上回る、つまりカロリー収支が赤字になること。方法は2つで、食べるのを減らすかカロリー消費(運動)を増やす。一般生活を送っているだけでは消費カロリーは大きく増やせないので、摂取カロリーを減らすのが王道になる。運動だけで減らすには、最低でも週に3度以上2時間以上の運動か、毎日5㎞走る・1時間半以上自転車に乗る、程度は必要になる。

安静時の1日あたり消費カロリーは男性で 2000kcal , 女性で 1600kcal 程度なので、摂取カロリーがこれを下回るのが望ましい。これは意外と難しくて、1日2000kcalとして3食食べていれば1食あたり 700kcal を下回る必要があり、これは間食や飲み物を含まない。コンビニ弁当などを見るとカロリーが書いてあるが、普通の弁当でも700kcal程度は簡単に超えてしまうので、それなりに気を付けないと減らせない。

脂肪 1kg あたり 7200kcal なので、脂肪だけで体重を1カ月に 1kg 減らすには 7200 / 30 = 240kcal は減らさないといけない。それ以上の体重を減らしたいのならそれに応じて摂取カロリーを減らす必要がある。現実的には1日 300-500kcal 程度減らせると成果が見えやすい。

2. 筋肉を維持する(ためにプロテインを飲む)

摂取カロリーを減らすと何が起きるかと言うと筋肉も痩せる。特別な運動をしなかった場合、脂肪と筋肉の減り方は概ね半々と想定される。仮に 3kg 痩せた場合、脂肪が 1.5kg 減るのと同時に筋肉が 1.5kg 減ってしまう。

筋肉が 1.5kg 減った場合、基礎代謝と運動代謝を合計して1日当たり約 100kcal の代謝が落ちる。カロリー収支をダイエット前に戻したとして、1日100kcalの支出が減っている状態なので、単純計算で1カ月で3000kcalが過剰になる。脂肪量でおおよそ 0.4kg 程度だが、効果が永続するので半年たつと 2.4kg の脂肪増になる。

という事でダイエットをする際には筋量を増やさないまでも維持することがとても大切だ。このためには適度な運動・筋トレが必要だが、そもそもカロリー収支を赤字にする量の食事では、筋肉どころか代謝に必要なたんぱく質が足りなくなる。タンパク質は1日最低60g、できれば80gは取りたいが、肉や魚でタンパク質をそれだけ取ろうとすると相当量の脂肪がついてくる。グリコのサイトから可食部100gあたりのタンパク質・脂肪量の表を引用する。

タンパク質と脂肪量

摂取 1g 当たりのカロリーはタンパク質 4kcal、脂質 9kcal、炭水化物 4kcal 程度なので、上記のように食物からタンパク質を補充するとそれと同じくらいのカロリー分の脂質を取ることになってしまう。ダイエットを考えたときに、これはいささか効率が悪い。脂肪も大事な栄養素ではあるが、ダイエットの際には真っ先に減らすべき栄養素でもあり、通常のダイエット程度得あればさほど不足しない。

余計なカロリーを取らずにタンパク質を補充するのに役立つのがプロテインである。私は SAVAS ウェイトダウン ヨーグルト風味 を1日1度、水泳など運動が多かった日は2度飲んでいる。またこれは個人の感想だが、ソイ(大豆)プロテインはそれなりに腹にたまりやすく、朝食をプロテインのみにした際にも何も食べないよりは耐えやすい。

3. 習慣化する(ためにルールとルーチンをシンプル化する)

今回は朝昼については食事をほぼ完全に定型化・習慣化している。人間なにかを続けようと思ったら習慣化するべきで、習慣化できるのは毎日ルーチンとして定型化できるものなので、特定のものしか食べない・特定のものを抜く、などはシンプルで習慣化しやすい。

ちなみに1月時点でもまだ続けていて、もう1㎏くらい減らしたらもういいかなと言う気分ではあるのだが、半年近く習慣化してしまうと逆に辞め時が難しいというか食事の戻し方も考えないといけないのが少し悩ましい。それくらいしっかり習慣化できたという事ではあるのと、あと朝昼については食事が非常にシンプルなので実は手間的には楽、と言うのがあったりする。

ダイエットに役に立つツール

Wifi体重計

ダイエット前からのものだが、体重体脂肪計は Withings の Smart Body Analyser WS-50 を使っている。乗るだけで Wifi 経由でクラウド・スマホに体重と体脂肪率が同期される大変便利な体重計だ。体重の増減はダイエットのモチベーション維持に重要な要素だが、短期的な(数日内での)増減は殆どが体の水分が増減しているだけなのでダイエット的には全く意味がない。最低でも1カ月以上のトレンドを見るにはグラフにする必要があり、体重計に乗るだけでグラフを作ってくれるこうしたデバイスは大変便利である。

ウェラブル活動量計

Fitbit Versa を常時つけていて歩数管理をしている。ターゲット歩数を設定できるので少し足りない時にちょっと追加であるこう、といったモチベーションになる。またダイエットに直接関係はないが、スリープトラックをしていて睡眠時間や睡眠の質を改善するのにも役立っている。

こうしたツール類は個人の好みもあるが、可視化はモチベーションに意外と強く効くのでなんらかのツールを使ってみるのは良いと思う。いまだとスマホで気軽にレコーディングダイエットをする方法もあるだろう。

運動促進用アプリ

毎日の運動用に使っている Home Workout は、自宅で道具を使わずに出来る腕立て・腹筋・スクワットなどの動きを中心に10分から15分ほどの運動を指導してくれる。道具がなくても運動できるので始めやすいし、最初は Full Body の 7x4 チャレンジを低負荷から始めると、毎日の運動 28日間指導してくれる。毎日の運動を通知もしてくれるし、月の実施日を表示してくれるのもモチベーション維持に役立つ。

この手のアプリは何種類もあるので(Workout で検索するとたくさん出てくる)、いくつか試して自分に合うものを見つけるのもよい。

結局のところ、人間は難しいことを継続できないので、シンプルで実効性のあるルールを習慣化することがおすすめ。その場合の絶対的ルールはカロリー収支を赤字にするなのは言うまでもない。

 

EDCとしてのたった119gの超軽量折りたたみ傘

Posted about 2 years ago by yoosee.
  edc urban

日本に戻ってからどうもEDCネタが遠くなってしまったが、思えば折り畳み傘も毎日持ち歩けばそれこそEDCだなと思ったのでひとネタ。いわゆる Urban EDC というものである。そういうジャンルもあるのですよ。

ハンズの119g折り畳み傘

モノはこれ。小さくて軽くて素敵。重さは 119g しかない。

55㎝ のモデルは119gだが、ひとサイズ小さい 50㎝ だとなんと 100g を切る 99g 。

この軽さとサイズになると持ち歩くのに本当にストレスがない。大抵のカバンに場所を取らず入るし、カバンに 100g が足されてもほとんど重さなんて感じない。100g は今どきのスマホより軽くて、だいたいキュウリ1本くらいの重さ。

軽量化重視なので自動開閉だのの機構はないし、少し華奢な感じではある。特に下ろくろと上はじき(というらしい、開いた傘を止める部分)の強度はちょっと不安。広げるのも畳むのも少し手間だ。とはいえこれはあくまで非常用の傘、日常の利便性よりも携帯性という替えがたい長所がある。

AS2OV + 折りたたみ傘

普段使っている小型ショルダーバッグ、AS2OV BALLISTIC NYLON MINI SHOULDER 02 にスッと入ってしまうのは素晴らしい。これで 55㎝ 傘なので、さした時のサイズは普通に大きめの傘で、携帯傘にありがちな、傘が小さくて体が濡れてしまうみたいな問題はない。また華奢とは書いたものの普通の風雨程度で壊れる感じはなく、その辺は hands+ ブランドを付けているだけあってきちんとしている。

元々ミニマリストを自称しているので日常持ち歩くものは極力少なく軽くしたく、実際カバンの中は財布と e-book リーダー、多少の文房具くらいしか入っていないのだけど、この傘はそこに足すだけの価値があった。不意の雨でも慌てなくていいし、雨が降りそうな気配があるがまだ降っていない、なんて時に傘を追加で持っていく必要がない。ミニマリストの強い味方である。

自動開閉折りたたみ傘と吸水カバー

ちなみに雨が降っている日はこれとは別の自動開閉折りたたみ傘を持って出かけている。これは本体重量 430g でそこそこ重い。その分だけ丈夫で1年以上使っていて今のところヘタってないし、自動開閉で畳むのも簡単。折りたたみ傘というよりは普通の長い傘の代替品である。吸水折りたたみ傘カバーとあわせて使っているので駅で畳んでカバーに入れてしまえば満員電車でも迷惑かけたりしない安心感があり、こっちはこっちで重宝している。

 

日本企業のITが既に陥っている危機的状況について

Posted over 2 years ago by yoosee.
  it business

日本企業のIT投資が増えるの減るのという話が未だにニュースに出ているが、2019年の現時点において、日本でITを導入するハードルが他国に比べて既にけた違いに難しくなっていることを指摘する声は少ないように思う。これは不可逆であり、今後はより難しくなるだろう。

(c) 移動都市/モータル・エンジン

日本ITの辺境化

なにが問題なのかと言うと、グローバルで展開しているエンタープライズ向けのソフトウェアベンダー、サービスベンダーが既に日本市場に対する投資や個別の対応をほとんど行っていないという現実、つまるところITにおけるジャパンパッシング、日本ITの辺境化である。

  1. ITシステム・サービスは既にグローバル市場が戦場になって久しい
  2. グローバル市場ではグローバルで標準化された仕様をそのまま (Out-of-Box) 持ち込むことが推奨され、また言語は原則として英語である
  3. グローバル市場において日本市場は言語や商習慣の障壁が高い割に小規模な辺境市場に過ぎない
  4. 辺境市場である日本市場に対して、開発的にも導入人材的にも気合を入れて投資する企業は既に少ない

ITマーケットでよさそうなサービスを日本で使おうとしても日本法人などなく、下手すると代理店もなく、日本語の解説資料なども乏しく、日本市場向けのカスタマイズなどしてくれる人もいない。導入コンサルを受けようにも日本語で作業できる人材も少なく、導入事例も当然少ない。既に無い無い尽くしに陥っているのだ。

社名は伏せるが、日本に昔からある外資の大きな日本法人ですら、シンガポールのアジア統括会社などと比べると体制も技術力も本国との交渉力も弱い、と言う状況が増えている。日本法人と一か月話しても埒が明かなかった契約交渉がアジアの統括マネージャーと30分話したら当人の権限で一発OKになったり、日本法人とシンガポール法人から異なった導入条件やサービス仕様を示されて確認すると毎度シンガポール側が正しい、などという状況は既に日常的に起こり始めている。

「英語」という基本かつ高いハードル

サービス提供元の企業が供出する製品情報や事例、Webiner (ウェブ上のセミナー動画) といったコンテンツも、英語のそれに比べて日本語コンテンツは非常に少ない。ITエンジニアの人であれば色々と体験しているだろうが、日本語だけの情報では既に仕事が出来ない、ないし、日本語で情報提供や対応されることを要求条件とすると選択できるシステムが一気に減ってしまう、と言うのがいまの日本でのITシステム導入に関する現実である。

この背景にはそもそもITというものが世界中でコモディティ化している状況がある。しばらく前ならば「ITも各国の状況を踏まえてローカライズ」などという認識もある程度あったが、今では「まずはグローバルでの標準化と共通化ありき」である。つまりは日本に限らず海外の大半の国でも似たような状況になっており、これに対応する方法自体はごく単純であって一般的なものだ。「英語で仕事をする」のである。単純かつ一般的なのだが、今の日本企業には恐らく非常にハードルが高い。

  • システムの仕様と海外の事例を英語のまま理解して日本企業に展開する
  • 導入・保守・更改といった契約と運用を海外の法人と直接議論する
  • 社内プロセスをパッケージをそのまま使った形を基本として標準化する

ITシステム担当者が少なくともこの程度できる必要があり、かつこれはまだ入り口に過ぎない。

更に難しいのは、ITを導入するチーム自身が英語や海外とのやり取りに慣れているというだけでなく、ITシステム導入に置いては企業内の業務部門を強く巻き込むのが必須であることだ。ITは現代企業においては即ちビジネスそのものであり、つまりIT部門のみではなく業務部門の人たちも正しく要件を伝える必要がある。つまりそうした要求部門・関連部門の人たちも海外のベンダーやコンサルとやり取りできないと甚だ効率が悪い。しかしこれは「社内公用語を英語にしろ」みたいな話であり、殆どの日本企業では流石に無理に見える。

ところで最近聞いた話をひとつ。グローバルにビジネスを展開している企業が各国拠点に対して統合されたITシステムを張り出すにあたり、ITシステムサポートのヘルプデスクを開く話になった。多言語対応をどうするかなども検討があったようだが、結論は「サポート言語は英語だけでいいよ」という国がほとぼ全てで、ローカル言語対応を要求した国は日本の事業所だけだった、などという笑えない話もある。実体験としても、欧米圏は既に当然として、少なくともグローバルに顔を向けて仕事をしている企業において、アジアや中東の国でも英語で仕事の話ができない社員がいる国などほとんどない。

竹やり

恐らくこうした危機感を持っている企業自体が現時点では少ない。それは大抵の日本の大企業はSIerと呼ばれる日本国内のIT導入ベンダーを抱えており、基本的にはそこに丸ごと頼る形が変わってないからだ。本来であればそうした企業が上記のような「翻訳」業務も受けるべきで、実際に海外ベンダーを担いで日本対応のフロントに立つ形も少なくはない。とは言え海外の豊富なシステムに比べるとそうした日本対応されているベンダーは少なく、選択肢に乏しい状況には変わりがない。

この話にオチや打開策はない。最終的には選択の余地なく、アジアの一地方としてグローバルの一部にならざるを得ない日本だが、恐らくそれまでの間、非常に制限された国内で使えるITを使いまわし続けるのだろう。それは他国の企業が既に当たり前のものとして享受している、ITが作り出す非常に強力な競争力の底上げを享受できないままグローバルのプレイヤーと闘わなければならないという、竹やりでB29を墜としに行く、ヒノキの棒でラスボス退治に駆り出される、そんな未来が既に来ていることをどれくらい真剣に危機と感じるのかという話であり、楽観的な未来はえがけない。

 

生産性を上げたいならまずその「検討」を止めよ

Posted over 2 years ago by yoosee.
  business

ビジネス新書みたいなタイトルを付けてみたのはさておき、日本企業の生産性がどうのという話をする際に「検討」というキーワードは避けて通れない。

日本の特に大企業でなにかをやろうという際には膨大な「事前検討」が欠かせない。検討資料が作られ、上司に事前レビューされ、打ち合わせで説明が行われ、コメントされ、コメントを反映するために更に追加の検討が行われ、確認のために打ち合わせが再度、再再度、再再再度設定され、と、これが下から上に向かって階層の数だけ繰り返される。またこうした事前検討の多くは机上検討で、あちこちから情報収集をし、情報収集のために打ち合わせをし、それを整理をして資料にまとめてという行為を繰り返す。こうした検討は、関係する全ての人々が「納得」するまで続く。

結論から言えばこんな「検討」は無駄だから止めるべきだ。

「検討」は金を稼がない

コミュニケーションは金を稼がないという話は以前書いたが、同様に「検討」も金を稼せがない。検討が価値を生むのは少なくとも検討を踏まえて「決断」が成された時点からである。生産性を考えるのであれば、金にならない行動は可能な限りで最小にするのが基本なのだから、検討に費やすコストと時間は必要最小限にするべきだ。

「検討」は経験値を増やさない

ゼロとは言わないまでも、検討をいくら続けても蓄積できる専門性や経験値はたかが知れている。特にスペック比較や市場調査などの机上検討は率直に言って本質的な知識や経験をほぼ全く増やしてくれない。多くの場合において深い経験をつめるのは実装や運用のフェーズに入ってからである。

今の時代、特にクラウドサービスであれば多くは5分もあればテストアカウントを作って試し始められるし、クレジットカードでもあれば本番環境での小規模な利用を試すこともできる。検討と言っても少なくとも早々に現物に触るべきだ。少なくともほぼ何の役にも立たない、往々にして自社が優位だと恣意的に言うだけの「機能比較表」のような〇×表を作っている場合ではない。

「検討」は無限に続けられる

検討はつまるところ決断の先送りなので、十分検討したという客観的な指標に乏しい。意思決定者が必要だといい続けていれば検討はいつまでも際限なく続けられる。

日本企業の意思決定者は、少なくない割合で残念ながら、部下から上がってきた資料に「コメント」することが仕事だと思っている。コメントを受けた下のものがどうするのかと言えばそれは「追加検討」するのである。端的に言って無駄でしかない。意思決定のために追加の検討が必要なのだとしたら、意思決定者は「意思決定のためにはこの点の検討が必要である」と調査事項を明示すべきであり、それ以外の検討は意思決定に不要なのだから無駄である。

生産性に寄与する意思決定とは「やらないことを決めること」だ。検討を増やすだけの意思決定は生産性に対して害である。