しばらく前の話題だが、米国で盲腸にかかるといくら払わないといけないかという話が出ていたので、実際に手元に届いた請求書と保険会社のレポートから大体の数字を抜き出してみよう。
元の請求額を見ると $53,000 、約600万円近い恐ろしい額になるが、実際には保険会社が大部分を負担している。個人の負担額は対象項目と保険のプランによって異なり、保険会社向け金額に対して概ね 0-30% 程度になる。当然ながら支払額が少なくて済むような保険は毎月の掛金が高いが、就職していれば企業が Benefit として負担するのが普通だ。
ところでそう、盲腸の手術代金を知っているということは実際にこっちで盲腸になったということだが、うちの家族は私と娘が米国に住んでいる間に盲腸になったのであった… なにも2人もならんでもいいのに。
さて元々の請求額、保険による調整と支払い、そして最終的な個人負担額は下記のようになった。これらの数字や割合は病院やケースによってかなり異なり、私の場合も自身と娘で相当違ったので、あくまで参考までに。
請求元 | 請求金額 | 保険割引額 | 保険会社負担 | 個人負担 |
---|---|---|---|---|
ER(緊急病棟) | $6,931.41 | ($5,040.41) | ($1,512.80) | $378.20 |
救急車(輸送) | $688.10 | ($550.48) | $137.62 | |
麻酔医 | $3,360.00 | ($1,450.80) | ($1,909.20) | $0.00 |
手術 | $3,483.00 | ($2019.07) | ($931.14) | $532.79 |
担当医 | $1,080.00 | ($730.98) | ($342.92) | $0.00 |
入院(5日間) | $37,877.00 | ($21,177.00) | ($15,267.29) | $1,432.71 |
総額 | $53,419.51 | $2,481.32 |
請求書にも明記されるのだが、見ての通り元の請求金額に対して保険会社向けレートというものがまず割り引かれ、そこから支払いプランに応じた負担額を保険会社が負担して最終的な個人負担額になる。
なおこれは容体の都合で5日間も入院しているのでその分がかなり高くついている。この国では盲腸の手術程度なら具合がよければ手術の翌日には退院なので、その場合はもっと安くはなる(なお出産ですら最短2泊程度で追い出される)。別の盲腸で2泊入院した時の病室代は $17,000 請求の $600 支払いくらいだったはずなので、ざっくり1泊 $8,000 (80万円) 前後だろうか。どんな高級スイートって感じだが。
ということで流石に盲腸手術で自分の財布から何百万円相当も実際に払うということはない。元請求額は実際それくらいだが、保険会社が間に入った段階で相当額が割引された上での一部自己負担になる。最終額は保険プラン次第で、完全に無保険だと本当に数百万払うということになってしまう可能性はあり、それ以前に手術をさせてくれないのではないか。
前述の通り普通は努めている企業が福利厚生として保険プランを提供しているが、転職の狭間などで苦労する人の話は聞く。米国民に対してはいわゆる Obama Care と呼ばれる国民皆保険が始まったので状況はマシにはなっているのだとは思うが(それもこの先はトランプさん次第だが)、旅行者はきちんとクレジットカードでも個別でも旅行保険に入っておくのは必須だ。
なお上記にあるように救急車もがっつり有料であり、しかも料金は基本料金+走行マイル数に応じた請求額になる上に、その先のERも当然高額である。そうしたこともあり、救急車を呼んで最初に聞かれるのは「お前は保険に入っているのか」である。世知辛い。