米国に長いこと住んでいたが、確かに日本に比べたら障害者、特に歩行困難者向けインフラの対応は日本に比べたら遥かに行き届いている。街を歩けば車椅子で移動している人はごく普通に見かけるし、車椅子の店員もさほど珍しくない。駐車場は一番近い場所が障害者向けに確保されるよう法律で定められてもいるし、エレベーターやスロープなどの設備も確実に利便性の高い場所に整備されている。
この日米の差はなにから生まれているだろうか。もちろん人造国家アメリカの是として平等と正義を奉じる国であるからこそという理由や、法制度の整備、車社会であること、単純に土地が広いからこそできるインフラの整備も少なくないが、あくまで個人的な意見として言えば最大のポイントはデブが多いからである。
なんの冗談かと思われる諸兄も多いかと思うが極めて真面目に書いている。
デブと言っても恐らく日本人が考えるデブとはスケールが違う。100kg 超えなど当たり前、普通の日本人の約3倍の体積を超える人も少なくない。重みで椅子を破壊する、飛行機のシートから左右がはみ出る、それが米国のデブである。そんな米国の肥満率は38%を超え(日本は約4%)、BMI 25 以上の過体重をカウントすると6割に達する。
デブが多いとなにが起こるのか。端的な答えは高い確率でデブは膝を壊すのだ。
膝を壊して歩くのが困難になる人が多いこの国では、車椅子や電動カートで移動する人はそこらじゅうにいるし、明日は我が身という人が山ほどいる。つまり歩行障害は誰にでも起こる問題と認識されているのだ。
全く歩けないわけではなくても、足が悪くて長時間歩けないので一人乗り電動カートなどの歩行補助具を使っている人は大変多い。ディズニーワールドなどに行っても車椅子やカートのお客さんはたくさんいるし、それを前提としたインフラが用意されている。これによって単に障害で足が悪い人だけでなく、加齢で歩行が困難になったお年寄りもインフラの利益を享受できるようになっている。逆に言えば、足が悪い人向けにインフラを用意しなければ大勢の客を逃すのである。
そんなわけでデブが多いこの国では障害者の中でも歩行の障害は身近な社会の一部であり明日の我が身でもある。決して褒められた話ではないのだが、結局のところどれだけ「障害者の存在が社会にとってあたりまえ」であるかが社会のあり方を決めている好例といえるのではないだろうか。