なぜ日本のIT導入は失敗するのか

Posted 4 months ago by yoosee.
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楽をすることを罪悪とみなす国ではITの普及が難しい、と何処かで書いた事があるが、こうした話はそのよい例だろう。

実務層に起因する問題である。実務層が無能だから、ではない。逆だ。実務層が勤勉で真面目すぎるから、仕事のシステムが多少おかしくても、一所懸命にカバーして動かしてしまう。その結果、かえって問題が隠れて見えなくなってしまうのだ。
見えない非効率 ー 今、動いているんだからいいじゃないか : タイム・コンサルタントの日誌から

現場が優秀で真面目なため、前工程からくるものに問題があっても自分の工程で全力でフォローしてしまうので、結果としては問題が解消するものの、重複業務が増加するため稼働が増え、効率性とは無縁になる。他国の企業でもこうした問題は発生しうるが、基本的には現場がそこまで勤勉ではないので「前工程で問題があったので自分の仕事がうまく行かないのだ」で止まるため早々に顕在化し、全体の責任者が何かしらの改善を行うしかなくなる。なのでこうした問題は大きくなりにくい。

更にこれが厄介なのは、現場の人達というのはそうした「自分たちの努力」に誇りを持ってしまうものなのである。もちろんそれが悪いわけではないが、「システムを導入するのであなたのその工程は不要ですよ」と言っても「いやそれがないと安心して仕事ができないのだ」「お客様に迷惑がかかるのだ」「万が一のことがあったら責任を取れるのか」と否定にかかってしまう。自分の仕事に誇りを持っているがゆえに、自分の仕事を否定されることに拒否反応を示す。

この状況に、トップダウンが弱い日本型組織の構造が組み合わさると、IT改革というものが大体において頓挫する。なぜなら、こうした組織での IT 導入はまず「現場の人から現在の仕事に基づく要求条件をヒアリングする」ことからはじめるからだ。現在の仕事は既にある非効率性を包含しており、現場の人はそれを「業務に必須なもの」として要求条件とする。そしてそれを廃されることを自分のプライドにかけて否定する。結果、高いお金で導入したITシステムはそれまでの業務プロセスの再実装でしかないものになる。

海外でのIT導入は、そもそもIT導入が主眼ではない。あれは「業界で既に効果が確立した業務プロセスの導入」であり、ベストプラクティスと言われるものを組織に持ち込むための手段である。ITは単にそれを現場に強制するためのツールにすぎない。もちろんトップダウンでの導入が現場の抵抗を生むことは多いし、導入自体に失敗することもあるが、そうした失敗を含めてプロセス自体を見直す機会があるからこそ、ITをうまく導入した企業の業務プロセスには効率性と健全さがもたらされる。

日本企業でそうしたIT導入をするには、以前記事を書いたようにIT導入による業務効率化に確信を持って取り組むことができ、かつ現場のプライドを理解し、丁寧に説得し、あるべき業務プロセスに持っていくという超人的な人材が必要になるわけだが、そもそもIT導入の成功体験を得られる機会が少ないことが、そうした人材を育成する機会自体を少なくさせている。なかなかに困難な道である。