EDCとしてのたった119gの超軽量折りたたみ傘

Posted about 1 month ago by yoosee.
  edc urban

日本に戻ってからどうもEDCネタが遠くなってしまったが、思えば折り畳み傘も毎日持ち歩けばそれこそEDCだなと思ったのでひとネタ。いわゆる Urban EDC というものである。そういうジャンルもあるのですよ。

ハンズの119g折り畳み傘

モノはこれ。小さくて軽くて素敵。重さは 119g しかない。

55㎝ のモデルは119gだが、ひとサイズ小さい 50㎝ だとなんと 100g を切る 99g 。

この軽さとサイズになると持ち歩くのに本当にストレスがない。大抵のカバンに場所を取らず入るし、カバンに 100g が足されてもほとんど重さなんて感じない。100g は今どきのスマホより軽くて、だいたいキュウリ1本くらいの重さ。

軽量化重視なので自動開閉だのの機構はないし、少し華奢な感じではある。特に下ろくろと上はじき(というらしい、開いた傘を止める部分)の強度はちょっと不安。広げるのも畳むのも少し手間だ。とはいえこれはあくまで非常用の傘、日常の利便性よりも携帯性という替えがたい長所がある。

AS2OV + 折りたたみ傘

普段使っている小型ショルダーバッグ、AS2OV BALLISTIC NYLON MINI SHOULDER 02 にスッと入ってしまうのは素晴らしい。これで 55㎝ 傘なので、さした時のサイズは普通に大きめの傘で、携帯傘にありがちな、傘が小さくて体が濡れてしまうみたいな問題はない。また華奢とは書いたものの普通の風雨程度で壊れる感じはなく、その辺は hands+ ブランドを付けているだけあってきちんとしている。

元々ミニマリストを自称しているので日常持ち歩くものは極力少なく軽くしたく、実際カバンの中は財布と e-book リーダー、多少の文房具くらいしか入っていないのだけど、この傘はそこに足すだけの価値があった。不意の雨でも慌てなくていいし、雨が降りそうな気配があるがまだ降っていない、なんて時に傘を追加で持っていく必要がない。ミニマリストの強い味方である。

自動開閉折りたたみ傘と吸水カバー

ちなみに雨が降っている日はこれとは別の自動開閉折りたたみ傘を持って出かけている。これは本体重量 430g でそこそこ重い。その分だけ丈夫で1年以上使っていて今のところヘタってないし、自動開閉で畳むのも簡単。折りたたみ傘というよりは普通の長い傘の代替品である。吸水折りたたみ傘カバーとあわせて使っているので駅で畳んでカバーに入れてしまえば満員電車でも迷惑かけたりしない安心感があり、こっちはこっちで重宝している。

 

日本企業のITが既に陥っている危機的状況について

Posted 4 months ago by yoosee.
  business it

日本企業のIT投資が増えるの減るのという話が未だにニュースに出ているが、2019年の現時点において、日本でITを導入するハードルが他国に比べて既にけた違いに難しくなっていることを指摘する声は少ないように思う。これは不可逆であり、今後はより難しくなるだろう。

(c) 移動都市/モータル・エンジン

日本ITの辺境化

なにが問題なのかと言うと、グローバルで展開しているエンタープライズ向けのソフトウェアベンダー、サービスベンダーが既に日本市場に対する投資や個別の対応をほとんど行っていないという現実、つまるところITにおけるジャパンパッシング、日本ITの辺境化である。

  1. ITシステム・サービスは既にグローバル市場が戦場になって久しい
  2. グローバル市場ではグローバルで標準化された仕様をそのまま (Out-of-Box) 持ち込むことが推奨され、また言語は原則として英語である
  3. グローバル市場において日本市場は言語や商習慣の障壁が高い割に小規模な辺境市場に過ぎない
  4. 辺境市場である日本市場に対して、開発的にも導入人材的にも気合を入れて投資する企業は既に少ない

ITマーケットでよさそうなサービスを日本で使おうとしても日本法人などなく、下手すると代理店もなく、日本語の解説資料なども乏しく、日本市場向けのカスタマイズなどしてくれる人もいない。導入コンサルを受けようにも日本語で作業できる人材も少なく、導入事例も当然少ない。既に無い無い尽くしに陥っているのだ。

社名は伏せるが、日本に昔からある外資の大きな日本法人ですら、シンガポールのアジア統括会社などと比べると体制も技術力も本国との交渉力も弱い、と言う状況が増えている。日本法人と一か月話しても埒が明かなかった契約交渉がアジアの統括マネージャーと30分話したら当人の権限で一発OKになったり、日本法人とシンガポール法人から異なった導入条件やサービス仕様を示されて確認すると毎度シンガポール側が正しい、などという状況は既に日常的に起こり始めている。

「英語」という基本かつ高いハードル

サービス提供元の企業が供出する製品情報や事例、Webiner (ウェブ上のセミナー動画) といったコンテンツも、英語のそれに比べて日本語コンテンツは非常に少ない。ITエンジニアの人であれば色々と体験しているだろうが、日本語だけの情報では既に仕事が出来ない、ないし、日本語で情報提供や対応されることを要求条件とすると選択できるシステムが一気に減ってしまう、と言うのがいまの日本でのITシステム導入に関する現実である。

この背景にはそもそもITというものが世界中でコモディティ化している状況がある。しばらく前ならば「ITも各国の状況を踏まえてローカライズ」などという認識もある程度あったが、今では「まずはグローバルでの標準化と共通化ありき」である。つまりは日本に限らず海外の大半の国でも似たような状況になっており、これに対応する方法自体はごく単純であって一般的なものだ。「英語で仕事をする」のである。単純かつ一般的なのだが、今の日本企業には恐らく非常にハードルが高い。

  • システムの仕様と海外の事例を英語のまま理解して日本企業に展開する
  • 導入・保守・更改といった契約と運用を海外の法人と直接議論する
  • 社内プロセスをパッケージをそのまま使った形を基本として標準化する

ITシステム担当者が少なくともこの程度できる必要があり、かつこれはまだ入り口に過ぎない。

更に難しいのは、ITを導入するチーム自身が英語や海外とのやり取りに慣れているというだけでなく、ITシステム導入に置いては企業内の業務部門を強く巻き込むのが必須であることだ。ITは現代企業においては即ちビジネスそのものであり、つまりIT部門のみではなく業務部門の人たちも正しく要件を伝える必要がある。つまりそうした要求部門・関連部門の人たちも海外のベンダーやコンサルとやり取りできないと甚だ効率が悪い。しかしこれは「社内公用語を英語にしろ」みたいな話であり、殆どの日本企業では流石に無理に見える。

ところで最近聞いた話をひとつ。グローバルにビジネスを展開している企業が各国拠点に対して統合されたITシステムを張り出すにあたり、ITシステムサポートのヘルプデスクを開く話になった。多言語対応をどうするかなども検討があったようだが、結論は「サポート言語は英語だけでいいよ」という国がほとぼ全てで、ローカル言語対応を要求した国は日本の事業所だけだった、などという笑えない話もある。実体験としても、欧米圏は既に当然として、少なくともグローバルに顔を向けて仕事をしている企業において、アジアや中東の国でも英語で仕事の話ができない社員がいる国などほとんどない。

竹やり

恐らくこうした危機感を持っている企業自体が現時点では少ない。それは大抵の日本の大企業はSIerと呼ばれる日本国内のIT導入ベンダーを抱えており、基本的にはそこに丸ごと頼る形が変わってないからだ。本来であればそうした企業が上記のような「翻訳」業務も受けるべきで、実際に海外ベンダーを担いで日本対応のフロントに立つ形も少なくはない。とは言え海外の豊富なシステムに比べるとそうした日本対応されているベンダーは少なく、選択肢に乏しい状況には変わりがない。

この話にオチや打開策はない。最終的には選択の余地なく、アジアの一地方としてグローバルの一部にならざるを得ない日本だが、恐らくそれまでの間、非常に制限された国内で使えるITを使いまわし続けるのだろう。それは他国の企業が既に当たり前のものとして享受している、ITが作り出す非常に強力な競争力の底上げを享受できないままグローバルのプレイヤーと闘わなければならないという、竹やりでB29を墜としに行く、ヒノキの棒でラスボス退治に駆り出される、そんな未来が既に来ていることをどれくらい真剣に危機と感じるのかという話であり、楽観的な未来はえがけない。

 

生産性を上げたいならまずその「検討」を止めよ

Posted 7 months ago by yoosee.
  business

ビジネス新書みたいなタイトルを付けてみたのはさておき、日本企業の生産性がどうのという話をする際に「検討」というキーワードは避けて通れない。

日本の特に大企業でなにかをやろうという際には膨大な「事前検討」が欠かせない。検討資料が作られ、上司に事前レビューされ、打ち合わせで説明が行われ、コメントされ、コメントを反映するために更に追加の検討が行われ、確認のために打ち合わせが再度、再再度、再再再度設定され、と、これが下から上に向かって階層の数だけ繰り返される。またこうした事前検討の多くは机上検討で、あちこちから情報収集をし、情報収集のために打ち合わせをし、それを整理をして資料にまとめてという行為を繰り返す。こうした検討は、関係する全ての人々が「納得」するまで続く。

結論から言えばこんな「検討」は無駄だから止めるべきだ。

「検討」は金を稼がない

コミュニケーションは金を稼がないという話は以前書いたが、同様に「検討」も金を稼せがない。検討が価値を生むのは少なくとも検討を踏まえて「決断」が成された時点からである。生産性を考えるのであれば、金にならない行動は可能な限りで最小にするのが基本なのだから、検討に費やすコストと時間は必要最小限にするべきだ。

「検討」は経験値を増やさない

ゼロとは言わないまでも、検討をいくら続けても蓄積できる専門性や経験値はたかが知れている。特にスペック比較や市場調査などの机上検討は率直に言って本質的な知識や経験をほぼ全く増やしてくれない。多くの場合において深い経験をつめるのは実装や運用のフェーズに入ってからである。

今の時代、特にクラウドサービスであれば多くは5分もあればテストアカウントを作って試し始められるし、クレジットカードでもあれば本番環境での小規模な利用を試すこともできる。検討と言っても少なくとも早々に現物に触るべきだ。少なくともほぼ何の役にも立たない、往々にして自社が優位だと恣意的に言うだけの「機能比較表」のような〇×表を作っている場合ではない。

「検討」は無限に続けられる

検討はつまるところ決断の先送りなので、十分検討したという客観的な指標に乏しい。意思決定者が必要だといい続けていれば検討はいつまでも際限なく続けられる。

日本企業の意思決定者は、少なくない割合で残念ながら、部下から上がってきた資料に「コメント」することが仕事だと思っている。コメントを受けた下のものがどうするのかと言えばそれは「追加検討」するのである。端的に言って無駄でしかない。意思決定のために追加の検討が必要なのだとしたら、意思決定者は「意思決定のためにはこの点の検討が必要である」と調査事項を明示すべきであり、それ以外の検討は意思決定に不要なのだから無駄である。

生産性に寄与する意思決定とは「やらないことを決めること」だ。検討を増やすだけの意思決定は生産性に対して害である。

 

サマータイム(DST)に関する個人的な経験と好き嫌いの話

Posted about 1 year ago by yoosee.
  social life dst

別記事で一般的に認識されるサマータイムの社会影響についてまとめてみたが、じゃあ個人としてはどうなのかという話を少し書いてみる。結論としては、夜が明るいのはたぶん皆が思っている以上に嬉しいことが多いと感じている。

実生活における影響(個人的な体験)

私個人は2017年まで米国フロリダのマイアミ付近の街に在住していて、サマータイム・DST は何年も経験している。最初に書いておくが、個人的にはDST導入推奨派だ。夕方から夜の入り口が明るいと、屋外での活動が問題なく出来るので好きだった。米国の場合はそもそも暗い屋外は安全面から出歩きを控える必要があるという背景もあるのだが。

DST


DST には(もちろん)良いところがある

DST中は夜も屋外が明るく、フロリダの 8月だと大体21時くらいまで外が明るいし、9月後半になっても20時台までは明るい。在住当時だと仕事帰りや夕食後に Ingress や Pokemon Go をしたり、夕食を屋外席のレストランで食べたり、(ビーチが近い街だったので)夕方のビーチを散策したりと、なかなか有効に活用できていたやに思う。あとアメリカ人的には夕食に裏庭でBBQをするという大変重要なイベントの助けにもなる。

フロリダ東海岸 6月29日午後7時14分のビーチ

これは6月末だが、こんな感じで夜7時を過ぎたビーチがまだまだ明るい。ここから1時間くらいは明るいので散歩などが気軽にできる。

またDST入りのあたりは朝が暗くなる。具体的には住んでいた辺りだと朝6時には日が昇っていたのが朝7時に日が昇るようになる。個人的には外の明るさに邪魔されずに安眠できるのはありがたかった。

日本での導入を考えると、8月の東京は日没が18時半前後、日の出は5時前後だが、これが日の出6時、日の入り19時半になれば夜にやれることが増えそうに思える。まして 9月に入るとあっという間に日の入りが17時台になってしまう一方で日の出はまだ5時台と言う(個人的な感覚では)アンバランスな状態なので、日の入りが 18時台になると屋外でやれることも増えるんじゃないかと思っている。

ちなみにフロリダは Permanent DST 、つまりDSTの切り替えなしに1年中DSTにすることを議会で可決する(米国連邦法の制約で実施はされていない)くらいにDSTに前向きな州であったことも、個人的にDSTに前向きな背景になっているのかもしれない。

なおフロリダ半島は標準時であるEST (Eastern Standard Time) の基準経度 75° に対して 80° から 85° くらいの位置である。南北に長い州だが住んでいた場所は北緯25度くらいの場所で、大体沖縄と同じくらいの緯度だった。

DSTの切り替え日と(個人的な)生活への影響

米国でも批判されがちなのはDST切り替えのタイミングでのコストで、時差の調整という人間の生理リズム的な問題もあれば、単純に時計をあわせ直すのが手間と言う理由もある。

現在の米国ではDSTの切り替え日は3月の第二日曜及び11月の第一日曜と決まっている。時計が変わる日は事前に会社でも通知が出たりSNSやニュースでも流れたりするが、それでも結構忘れていて、ちょうど秋のDST終了時に旅行をしていて朝起きてもレストランが開いておらずようやくDSTに気づくなどもあった。

仕事でいうと米国内ならば一部を除いて同じ日に時計が一斉に変わるので、ミーティングの時間などに影響はないが、日本や欧州との打ち合わせが1時間ずれたり、また南米だとそもそもDSTのタイミングが逆(米国の夏はブラジルの冬)という事もあって時差を考慮してミーティングを調整しなおすのは多少面倒だった記憶はある。

最近の時計は自動時刻合わせ機能があるものが多く、スマホPCはもちろん、家の時計も電波時計は自動的に変更されるし、腕時計も電波時計搭載のものかスマートウォッチであれば自動で調整される。車の時計も新しい機種だと勝手に修正されるようになってきているので、時計を手で直すのはそうした機能のない時計を 2,3個程度だった。まあ古い自動車の時計などは直されないままシーズンを超えたりすることもあり、時計合わせが必要な時計は面倒だったのは間違いないが、言うほど大した手間ではない。

春のDST(時計が進む)は睡眠時間を1時間奪われるので確かに厄介なのだけど、そもそも米国内でもタイムゾーンをまたぐ出張をすると1時間どころか2時間3時間の時差調整は発生するので、個人的には慣れたものであり例によってメラトニンで解消するようになってからは大したダメージはなかった。ただ子供など家族は 1週間くらいは朝起きるのが辛そうにしていた様子はあった。

ちなみにDSTの切り替え日にITシステムの特別保守を取るようなことは個人的な観測範囲では全くなかった。2007年のDST期間延長時などにはあったのかもしれないが、毎年のDST切り替え日はサポートもオペレーションも注意は払うものの、なにか特別な事前準備や当日の体制強化をするなどは記憶にない。

結論と言うほどではないが

そんな感じでDST・サマータイムは個人的に好きだし悪影響ばかりというわけではないし日本でも導入すればいいのにと思っている。現在の情報システムが運営する社会に置いて時計を動かすことは簡単ではないのは承知なので、それなりの時間とコストをかけて準備しつつ、生活上の問題はまあそういうこともあるよね、と流せるような社会を目指すのもいいかもしれない。

Permanent (Year-Round) Summer Time と言う選択肢

ちなみにEUがサマータイム廃止に舵を切ったことも契機なのだろうが、最近は上のフロリダの話でも書いたような Permanent Summer Time と言う話も目立つようになってきた。つまり1年ずっと夏時間にしようという話で、現実的にはタイムゾーンを1時間分丸ごと動かす話と等しい。これだと冬の朝がどうしようもなく暗くなるというデメリットはあるものの、サマータイムの最大の問題である「年に2回 時計をずらす必要がある」問題が解消され、社会コストも健康リスクも回避される。これも日本でも検討したらいいんじゃないかなあ。

 

サマータイム (DST) のメリットとデメリットについて

Posted about 1 year ago by yoosee.
  social life dst

サマータイムの話題が盛り上がっている。猛暑の東京五輪のためだけに2年間限定で2時間ずらすとかいう妄言は流石に聞くに堪えないが、否定する方も「百害あって一利なし」くらいの主張になっている人も多い。が、流石に世界中の国々にそれなりに普及している取り組みが害ばかりということは流石にない。ちょうど EU がDSTに関するパブリックコメント募集をしたところでもあったのでDSTの影響をごく簡単にまとめてみた。

なおそちらの原文を読めば分かるが、健康や安全などの個別領域においてすら益不益については inconclusive (結論付けられない) が多い。色々な記事や論文を眺めた感じ、好悪を併せた影響は数%以内に留まるものが殆どで、個人的な感想としてはその程度であれば国民の好き嫌いで決めればいいんじゃなかろうかと思う。

DST

ちなみに Summer Time ではなく DST (Daylight Saving Time) という呼び方をする国も多い。まあ米国など3月に開始して11月に終わるような国だと、なにが Summer だという感じなのかもしれない。

サマータイム (DST) についてのサマリ

主に下記2つの記事、EUでサマータイム継続の是非をパブコメ募集したアナウンスに記載されたサマータイムのサマリーと、ウィキペディアのサマータイム(DST)記事、及びその先の参考文献から情報を拾っている。

全般的な話としては、サマータイムが及ぼす影響範囲は非常に広く、また多くが社会的なものである。そうした社会的影響はサマータイム以外の要因を多く受けるため、サマータイムの実を切り出して好影響と悪影響を総合してよしあしの判断をするのは難しい、といった結論が多い。日照の状況は緯度や高度、その国の標準時からの東西距離によっても大きく異なるため、影響が一概に語れないという事情もある。また先に書いたが影響の大きさも数%内程度の範囲が殆どである。

エネルギー消費

エネルギー消費の削減、省エネはサマータイム導入当初の大きな理由だったが、実際にはさほど効果が無い事がわかっている。各種サマータイム研究から推定値を算出した論文では、0.34% の削減となっており、数値としては小さい。

省エネは高緯度ではある程度効果があるが、低緯度ではむしろ生活の中で暑い日中時間が長くなるために冷房によるエネルギー消費が増える結果が報告されている。EUパブコメのサマリーでも「ロケーション(緯度や高度)などの様々な要因の影響を受ける(Results also tend to vary depending on factors such as geographical location)」とされている。こうしたエネルギー消費の増減は大きくても2%以下、多くは0.5%以下程度の影響にとどまる。

経済効果

夕方から夜の屋外が明るいことにより、路面店に寄る人が増えることで小売業は売り上げ増になるのと、屋外活動が増えるためスポーツメーカーなどが利益を受けることが指摘されている。例えば米国での数字では、サマータイムが7週間延長されることでセブンイレブンが $30M (約33億円) の売り上げ増を受けたとされる。またゴルフ場は $200Mから$300M 増と効果が大きい。

またDST導入によってEU全体で3%の売り上げ増が得られているという試算がある。商業活動のみを切り出した観点からは、屋外が明るい活動時間帯が増えるので益が出やすくなることは想像に難くない。

一方 EU パブコメでの評価では経済効果に関してはほとんど触れられておらず、一点「EU加盟国内でバラバラに導入すると内部通称コストが増大して悪影響を及ぼす」点のみが指摘されている。隣接する国の時差が季節によって異なるような状況だと、国境を超えたり商談をする際の調整が厄介になり、商活動に悪影響が出るのは想像ができる。実際に米国とブラジルなど南米では、そもそもDSTが適用される季節が真逆(北半球の夏は南半球の冬)のため、DSTによる時差が1時間・2時間・3時間と変化するというめんどくさい状況が存在する。

今回 EU がパブコメの結果をもとにDST廃止の推奨勧告を出しているが、ドイツが票の3/4を占めた投票結果で、各国がどう対応するのかはまだこれからの話であり、場合によってはEU内でも国ごとにDSTの導入状況が異なるというパブコメで懸念された状況が生まれる可能性もある。

健康

屋外活動が増加する事、日光を浴びる時間が延びることによる健康への好影響が指摘されている。また同様の理由で鬱に対して改善をもたらすとの論がある。

一方で時計が年2回動くことによるバイオリズムへの悪影響は想定より大きいことが数多く指摘されている。睡眠サイクルが1時間ずれた場合、これを戻すのに2-3週間かかるとされる。また特に春に時計が1時間進む、つまり睡眠時間が1時間減るサマータイム開始時は、実施日から1週間内の心臓病発生率が10%増える、などの明確な健康問題が生じるとされている。また前の論に反して鬱に悪影響を及ぼすとの論もある。

但し同論文でも、秋のサマータイム終了時、つまり睡眠時間が1時間増えるタイミングでは逆に有意に心臓病の発生率が減少しているというデータがあり、バイオリズムの変化による影響以上に、睡眠時間の減少による影響が多いのかもしれない。そういった意味では日本人はサマータイム以前に睡眠時間を増やすべきだろう。

閑話休題。EUパブコメのサマリーでは「好悪を総合した健康への影響は結論付けられない」としている。

安全

夕方の時間帯がより明るくなることにより、交通事故は 1 - 2%の減少、また対歩行者との死亡事故は 5%の減少を示唆する研究がある。一方で春のサマータイム開始時からの2週間は(主に睡眠不足のために)事故率が10%上昇するとの報告がある。

但し長期的な社会トレンドで見た場合には、こうした事故の増減はサマータイム以外に車の性能や交通網の整備などを含めて様々な影響も受けるため、EUパブコメの評価ではサマータイムの影響が総合的に交通に好影響となるか悪影響となるかは結論付けられないとしている。

なお交通事故以外でも、夕方から夜の活動時間が明るいことで、強盗などの屋外犯罪に間しては一定の犯罪抑制効果があることが指摘されている。

農業

農業に関しては古くからサマータイムの悪影響、ないしサマータイムを実施されても実際の労働時間は太陽に併せる必要があるために農家に時計と生活時間帯がずれるなどの負荷がかかることや、逆に時計に動物の生活サイクルを合わせることで牛乳の産出量などへの悪影響が指摘されてきた。

しかし一方で近年では特に畜産や乳業分野において、人工光の利用や機械による自動化によって日照と時間のズレによる悪影響は殆ど無くなっているとEUパブコメでは指摘されている。また屋外作業が多い農作業に関しては、屋外で使える時間が増える事がメリットになることが挙げられている。

導入コスト

2007年に米国がサマータイム(DST)を延長してサマータイムの開始終了週を変更した際のコストは $500M から $1B (約550億円から1100億円) と見積もられている。これはあくまで「延長(開始終了日変更)」コストであって新規導入コストではないことに注意。また米国は国内に複数のタイムゾーンを持つ国であり、システムやプロセス上、時計が変化する場合の扱いに社会として長けているであろう点を考慮する必要がある。

つまり日本のように過去にサマータイムを導入した経験に乏しく、そもそもタイムゾーン設定などなしにシステムを作る場合も少なくない国では、サマータイム導入コストは膨大になる可能性が高い。一般論として Windows や Linux や iOS や Android など一般的なOS、またJavaやRubyなどの近代的なプログラミング言語、cron などの一般的なツールはタイムゾーン・サマータイムを内部処理できる仕組みを持っているが、そうした機能を活用せずにシステムを構築している事例も多いことは想像に難くない。また単純に試験コストだけでも膨大なものになるだろう。

導入完了後の毎年の実施コストは様々な説があるが、多くのユースケースが健康被害なども含んでしまっているため、実施のみのコストは算出が難しい。

その他

  • 屋外での活動が活発になるという事は裏返しで屋内活動が減る。端的にはいわゆるゴールデンタイムのテレビの視聴率が下がることが報告されている。
  • 年2回の時刻変更イベントを利用して防災の喚起や防災機器の電池チェックなどを織り込んでいる国がある

サマータイムは益か不益か

冒頭に書いたように、結局のところはメリットとデメリットどちらも数%内のオーダーであり、各国とも国民が好みで導入を決めればよいのではないかと思う。EUのパブコメは400万票のうち8割が廃止を希望という結果だが、ドイツからの票が3/4だったという話もあり、ドイツでは過去にサマータイムに起因する産業事故もあったなどの事情もあるし、ドイツ人はこういうかっちりしない制度は嫌いだろうなと思わなくもない。

そういう意味で日本も向いてるかと言われると微妙に思うけど、逆にこれを機に世界にはタイムゾーンが存在していることを改めて認識して頂いたり、また時計がずれたのを言い訳に少しはいい加減に社会を回すとかすればいいんじゃないか。2020年の五輪限定で実施するとかいう妄言はともかく。