今更の話だが Pebble Time Round - Black 20mm band (JP) を買ったのでレビューする。端的に言えば大変気に入った。少し前に Moto 360 1st gen を2ヶ月ほど借りて使った際に、スマートウォッチには 「時計」と「通知」、あとは「ヘルスモニタ」以外に必須な機能はないという結論に至ったのだが、Pebble はこれらに非常にうまくフォーカスして使い勝手を上げている。またこの Time Round は大変小さくて軽いのがいい。
購入時は Refurbished (返品の再販売品) に加えて Amazon Gold Deal で $129.99 + tax まで値下がりしたが、今普通に買っても $180 くらいのようだ。なお標準では日本語対応がないが、日本語化は有志の language pack を入れるだけで簡単にできたので割愛する。
ハードウェア
Pebble Time Round を開封しての第一印象は「薄くて軽い!!」だった。感覚的にはスウォッチ程度で、スペックを見ても厚み 7.5mm 重さ 28g とかなり小さい。ステンレス筐体の出来もなかなか良くて安っぽさはないし、ボタンも安定感がある。moto360 は 11.5mm 49g だったので腕につけても相当な違いを感じる。
Pebble はタッチスクリーンがない代わりに右側に3つ、左側に1つのハードウェアボタンがある。右側は「上」「決定」「下」で左側が「戻る」ボタンになっている。 moto360 のタッチスクリーンはしばしば指の動きに反応しなくてストレスを溜めたことを考えると、ハードウェアボタンでの確実な操作はむしろ使いやすい。タッチスクリーンがあったところで上下左右のスワイプとボタンのプッシュ以外に大した操作はしないのだし。
惜しむべくは防水が IPX7 splash proof レベルなこと。プールにつけて入れないのはともかく、シャワーもよろしくないのは日常身に付けるものとしては少し残念ではある。革バンドなのでどのみち水はよくないのだが。
ウォッチフェイスとディスプレイ
商品写真で見ていた時はウォッチフェイスの縁に 5 mm も枠があり広すぎてカッコ悪いと思っていたが、使ってみるとさほど気にならない。ただこの縁のおかげで時計としてはどうしても少しオモチャっぽい印象になるのは否めないので、もう少し表示面が広いと良かったのにとは思う。
画面は電力消費の少ない e-paper で、e-ink ではなく Transflective low-power memory LCD らしい。解像度は 180x180 となっているが、円形なので画素数はその分少ない。英語では特に問題ないのだが日本語を表示させるとフォントにシャギーが出るのがちょっと悲しいというか懐かしいというか、だが、実用には耐える。なお色数は64色だが、画像を見るような用途ではないので特に問題は感じない。
半透過型LCDということでいわゆる e-ink と比べると反射光下での視野性は多少劣るが、操作時の反応速度は普通のLCD同様に早くて全くストレスが無い。また標準で常時表示型なので、他の多くのLCDやAMOLEDスマートウォッチのように画面表示のために毎回腕をひねったりしなくていいのは快適だ。なお腕をひねるとバックライトを点灯させることが出来るので完全に暗いところでも文字盤は問題なく読める。
電池の持ちと充電
他の Pebble と違って Round は電池寿命が 2日強である。これは薄型のサイズによるもので、継続使用1週間の Pebble Time の電池容量が 150mAh なのに対して Round のそれは 56mAh らしく、そりゃ2日しか持たないわけだ。とは言え moto360 が 320mAh で丸1日持たないことを考えると e-paper と機能限定の恩恵は大きい。個人的にはあと1mm程度厚みを増してもいいからバッテリーをもう1日伸ばすなどしても良かった気はするが、この薄さと軽さは快適だし、15分程度で +40% 程度 (約1日分) の充電ができるのでさほどストレスはない。
充電は専用のUSBケーブル一体型磁気接触式コネクタで行う。充電速度はかなり早く、上記の通り15分もあれば+40% 程度の充電ができるし、フル充電も1時間もかからない。朝シャワーを浴びる時であったり仕事でキーボードを打ち続けるときには外すので、その時にでもちょっと充電しておけば十分である。予備の充電アダプタも安いので家と職場に置いてある。
時計バンド
Pebble Time Round のバンドは 20mm と 14mm のモデルがあるが、どちらも簡単にバンドの取り外しができて同サイズの市販品との交換ができる。Apple Watch のように専用バンドでないので、世にある非常に幅広いラインナップから自由に選ぶことが出来るのはメリット。
ソフトウェア
Pebble のタイムラインUIは当初から評判が良くてレビューもそこらにあるのであまり詳しくは解説しないが、確かにこれはこれで使いやすい。というかまあ、スマートウォッチ自体で様々な情報を見たいとは殆ど感じないので、スケジュール・タイムラインにフォーカスしたのは当たりな気がする。
Pebble Time Round にはスピーカーはないがマイクがあるので音声入力が出来る。日本語の入力は出来ないが、SMSに音声返答したり、タイマーやリマインダなどを音声コマンドで入力したりといったことが出来る。幾つかのソフトで IFTTT 連携があるので、時計経由で IFTTT のトリガーを引けるのは色々と面白いし使い勝手がある。
また moto360 を使っていた時は数日に1度程度はフリーズしたり電池切れでシャットダウンしたりして、再起動にこれがまた5分10分かかっていてストレスをためていたものだが、Pebble はそうした不安定さをほぼ全く感じない。ファームウェアの更新などで再起動しても30秒位で立ち上がってくる。日常使う「時計」に当たり前に期待したいレベルとしては大事なポイントだ。
総評
元々スマートウォッチが欲しいというよりは、旅行中に時刻合わせが必要のない時計が欲しいというのがひとつの大きな動機だった。moto360 は機能的には要件を満たすものの、飛行機に乗っている間に電池が切れてしまうのでは目的を果たせない。Pebble Time Round は電池が2日間なので、移動が24時間を超えても乗り切ることが出来るのは個人的に嬉しい。
moto360を試す前はスマートウォッチには色々と幻想を持っていたのだけど、最初に書いたとおりで実際に使ってみると結局のところ「時計」と「通知」、強いて他に言えば「ヘルスモニタ」以外に特に必要とする機能はないという結論に至った。なんにしてもスマホを一緒に持ち歩いているのが前提なので、少しでも複雑なことをするならスマホでやったほうが楽なのである。恐らく将来的に音声入力の発展が状況を変えるだろうが、現時点ではまだやれることは限られている。
その意味で Pebble はそうしたユースケースをうまくとらえて製品化している。常時表示の画面や長めの電池寿命など、日常使うことにストレスを感じないようなうまいパッケージングがされていると感じる。また毎日身につける「時計」として、この薄さと軽さは大きな長所だろう。何年かすればハードウェア性能が機能に追いつくのかもしれないが、現時点では最もこなれたスマートウォッチと呼んでいいのではなかろうか。
しかしこれ、低解像度・低色数で少しシャギーな日本語フォントを見たりするとどうしても古のPalmOS時代のノスタルジーを感じることよ。低機能で電池が持つというコンセプトも似てるしね。