Ingress を 2015年11月に引退してもうすぐ1年が経とうとしているので、忘れないうちに自分の思い出として書き留めておく。基本的に自分語りでまとまりもないが、5年後10年後くらいに自分で読み返すつもりの文章である。実際いま思い返して書いている時点で楽しかったなあという感慨がある。
ベータ版参加と本格開始から引退まで
イングレスに参加したのはベータ時代の2013年12月のこと。とは言え周囲20km内にポータル数個しかない状況で、最寄りのポータルすら1 km以上先、なにをしたらいいのかも分からず、結局数週間も遊ばずにアンインストールした。今思えば Guardian や Seer が取り放題だったわけだし、せめて Lv. 4 まで上げていれば Innovator が取れていたと再開後に後悔したのは言うまでもない。
その後 2014年8月に iPhone 版がリリースされるのにあわせてSNSなどでプレイヤーが目につきだし、そう言えば以前やっていたなと再インストールしたのが本格的な開始になる。2015年8月にLv.16到達。再開からほぼ丁度1年間で、米国地方都市のエージェントとしては頑張ったほうじゃなかろうか。まあ途中で増えたメダルがなければあと2ヶ月はかかっていただろう。
Lv.16 到達後も地元のエージェントと一緒にそこそこ活発に活動していたが、数ヶ月後の 11月に GPS 偽造エージェントから 149 days の Guardian を不正に崩されてやる気を失い引退。ローカルセルでのトップエージェントも取ったし Anomaly も参加したりと、プレイしていた1年強の間はかなりの情熱を注いでいたのは間違いない。
Ingress の楽しみ
イングレスにはレベル上げやMU稼ぎと言ったゲーム内の目的以外にも色々な楽しみ方がある。ポケモンGOと較べてもゲーム内でやれることはかなり多く、プレイヤーが色々な目的を持てる上に、そこから派生したゲーム外の楽しみ方が多数あるのが、恐らくポケモンGOに比べてイングレスがとっつきにくいところでもあり、ハマると面白いところでもあった。
新しい場所への探索
UPV, Unique Portal Visited という新規ポータル訪問数を稼ぐゲーム内目的に沿うものだが、そのうちに新しい場所に行くこと自体が楽しくなるのがイングレスのいいところ。住んでいた辺りには Natural Area という散歩道付き自然保護区が散在しており、散歩道の途中にたいてい休憩用のパビリオンや動物の標識などがポータルになっていて、うまい具合に歩いて回れるところが多い。
Ingress を始める前はそんな場所があることすら知らなかったが、Intel Map で見つけて UPV 稼ぎにあちこち回った。こうした場所は車で直接アクセスできないので防御が薄い場所が多く、ぐるりと回ってUPVとUPCを稼ぎつつ多重ポータルを作ってAPとMUを稼ぐというプレイができるので好んで訪れていた。南フロリダは湿地帯なので、湿地の池の上に木の橋を渡して散歩道にしている感じの Natural Area が多く、鳥や小動物も見かけられて散策自体が楽しい。また海の近くの公園にもプレイ中にポータルが生えてきて(うち幾つかは自分の申請だが)、ここも散歩がてら多重ポータル張りに回ったりしていた。
特にお世話になったのは生活圏内からさほど遠くないところにあるアートスタジオで、プレイ後しばらくしてからのことだが駐車場にあるアートのオブジェが狭い範囲に多数ポータルになっていた。ここは徒歩一周10分くらいの範囲で 15Portals / 37Links / 33CFs の多重を 30分強で張れるこの辺りとしてはまたとない恵まれた場所で、何度も通ってAP稼ぎをした。
なおフロリダでのイングレスプレイ最大の敵は太陽である。夏には気温40℃、紫外線強度10+を誇り、ドクターが日焼け止め無しでの直射日光を15分以上浴びることを避けるよう通達を出すくらいの土地である。湿度も常時80%を超え夏のイングレスはまさしく地獄。ただその分、冬でも20℃を割らない地域でもあるので1年中楽しむという点ではメリットでもあった。
Seer 稼ぎの新規ポータル登録
当時でも既に新規ポータルは申請から最短180日以上かかると言われていたが、それでもまだ登録は可能だったので Seer 目当てに結構な数を申請した。街を歩くときに Map を見ながら「このポータル空白地になにか登録できそうなものはないか」と丹念に眺めながら歩くのは意外と楽しく、何度も行ったことがあるダウンタウンの思わぬところに鷹の彫像や面白い街灯やリバティーベルを見つけたり、友達の住んでいるアパートメントの避雷針に魚や鳥の彫像がくっついているのを見つけたりと「あらこんなところに」感覚を味わうのは Ingress での面白さの中でも格別のものだ。結構大きな噴水ですら意識していないと気づかないものである。
新しいポータルに申請できそうなところを探しながら行ったことがないところを散策するのはUPV稼ぎと並んでイングレスの大きな楽しみだったし、旅行や出張などで新しい街に行った際には必ず数カ所は Portal 申請をして帰っていた。全てが申請を通ったわけではないがカリフォルニアやユタ、テキサス、ワシントンDCあたりにポータルを生やしたし、ディズニーワールドやカリブ海離島の観光地にも幾つか生やすことが出来て、自分の名前がそこに残っていると思うと嬉しい。
最終的には100程度生えて採用率は40%程度。度が行き過ぎて、車で運転中に「あれこんなところに空を眺めるオッサンの彫像なんてあったかな。Portal としては登録されてないしあわよくば…」と思ってよく見てみると電柱作業を下から支持している生のオッサンだったりとか、しょうもない体験もしたりしている。
ミッション作成が開放されてからは自分でも4つほどミッションを作った。今見てみるとそこそこの人数にプレイしてもらえたようだ。旅行先でもお土産ポータルキーと併せて2,3個のミッションをこなすようになったのも覚えている。
コミュニティと友達とアノマリー
地方のイングレスエージェント人口は少ない。アクティブにプレイしているエージェントは多いときでも 20km四方で ENL/RES ともに2,3人程度だったと思う。1年間ほぼ毎日のようにプレイしていて現地で偶然エージェントに出会ったのは20回は超えないだろう。とは言え Hangout や GroupMe や Slack には地域チャットチャネルが出来ていて、私もそれに参加していた。
ちょうど Shonin Anomaly が Orlando であったので車で3時間かけて参加したりもした。知らない人同士でも数時間も一緒に戦うと仲良くなるもので、Anomaly は大変面白かった。ENLが勝ったし。地元で First Saturday を開催したこともあり、多少お手伝いさせてもらったし、Flash Farm + Beer みたいな突発イベントもたまにだが参加した。年齢層的には 30-40代くらいが中心だったと思う。ローカルで仲良かったのは結構なオッサン集団だったけど、イベントだと女性も 3,4割くらいはいたんじゃないだろうか。なかには子連れで来ている人もいて、FS でレベル上げを手伝ったりもした。
なお私は活動地域ではそれなりに名が売れてしまっていたようで、Agent 名を見せると「ああお前が yoosee か!」とか言われることが多かった。別にそれで問題になったことはないが、最後の Guardian 崩しはその辺が原因だった雰囲気ではある。とは言え自ファクションよりも対抗ファクションの活発な Agent がいないとゲームが成り立たないので、引退時に惜しんでくれたのは RES の人も多かった。
Swag
Ingress は今でこそ Anomaly 公式販売などがあるが2015年末位までは公式物販が殆ど無くて、その分わりと皆が好き勝手に Swag (グッズ) を作っていた。たいして高いものでもないので、ingress - Etsy や Ingress Swag Addicts - Google+ を眺めて物欲をそそられては幾つか注文したりしていた。なかでもやはりエージェント名・セル名入りのバッジは有志の作成に乗って作ったのだが届いたときは嬉しかったものである。
ピンズは1つ1つが数ドル程度と安いのでそこそこ買っていた。Enlightened ファクションのものや A16 到達、Niantic の限定ピンズも買ったし、FS の際に買ったやつもある。Anomaly のものは Persepolis まで。なおハート型のやつは Ingress ではなく Tumblr のもの。
米国地方都市でのイングレスの難易度と楽しみ方
田舎の Ingress プレイのなにが難しいかといえば、なんといっても Level 8 Portal の希少さだ。活発なエージェントが少ない土地では同じファクションが 8人集まるなどはそうそう無く、ポータルのレベルは高くて Lv. 6 程度まで。いきおい X8 や R8 が入手しにくくなるので、なおさら P8 ができにくい。
Portal 自体はプレイ時期にも新しいのが生えてきてくれたのでそこそこあったのは幸いだった。もちろん東京ほど「どこにいってもある」わけでは全くなく、アートスクールや美術館周辺、ダウンタウンのストリートアート、公園や Natural Area など10から20程度のポータルが集中した場所を車で回ってプレイするのが地方の一般的なスタイルだ。知り合いのエージェントには毎日自転車で何十キロも回っていた剛の者もいたようだが。
またこれくらいの田舎だと 20km 圏内で活発に活動しているエージェントは自分とRESの某AGの2人だけなんて状況もままあって、示し合わせて協力プレイをするまでもなく、暗黙のうちにシールドを入れずに多重ポータルを組むと入れ替わりに相手が破壊と構築をするのを繰り返す、なんてプレイもある。むしろそうしたエージェントが活動してくれないと、Portal 15 箇所で組んだシールド無しの多重CFが72時間手付かずで放置されるなど、これ以上なにもできない状態になるのが一番辛い。最悪自分でポータル反転させたこともある。
なおプレイ期間中に東京出張したときはあまりのポータルの多さと変化の早さに大変驚愕した。米国の大都市幾つかでもプレイしたがそれに比べてもあれ、本当に東京は別のゲームだと思う。
大きなCF張り
逆に田舎故に可能なプレイのひとつはソロでの大CF張りだろう。陸上でも 1辺 10 km程度のCFならば張るのはさほど困難ではない。しかし当然ながらこのためにはブロックしている link を切断しつつ車でぐるぐると、トータル 100 km 以上のドライブという地球に優しくないガソリンの使い方をするわけで、しかもあちこちで止まったりなんだりすると燃費もよろしく無く、かつ場所によっては駐車して作業するために数ドルの駐車場代を払うなどもしていて、クラスタ1位を取った週のガソリン消費量は平均のほぼ4倍を超えるなど結構な財政負担を強いた。Ingress は無課金だったけどガソリンと駐車場には結構投資したと思う…
ソロプレイでのCF張りも楽しいのだが、ローカルAGと協力してのCF張りというのもやった。とは言え個人でも出来るくらいの話なので協力プレイと言っても気軽なもので、「今日の午後中にここからここへリンク張れる人いない?」「1時間以内くらいにこのリンクを切ってくれる人募集」だのとローカルのGroupMeで相談しながら割と非同期に作業してもそこそこ大きなCFが張れる。最大だと一辺 50kmくらいのものは張れた記憶がある。悲しいのは人口密度の都合でどれだけ大きなCFを作ってもたかが知れたMUしか稼げないことだったが。フロリダ半島の南端を囲む一辺 200km 超の大規模CFにも一度参加したが、間のリンクを切る程度の手伝いだったので個人的な達成感はほどほど。
Guardian
最終的にプレイを辞めるきっかけになった Guardian だが、アクセスの悪いところにあるポータルを狙って道なき道の奥へと進むのもこれがなかなかに楽しい。
入場有料な日本庭園の更に最奥にあるトレイルを30分も歩いた終点付近にあるポータル、位置情報が間違って登録されたのか公園の周りのカナル縁の作業道(立入禁止ではない)の端にあったポータル、ボートで行かないとたどり着けないカナル内の離島公園のそのまた端にあるポータル、Intel Map で行きづらそうな場所を見つけてはトライしたものである。
1時間かけて確保したポータルをその2時間後には知っているエージェントに壊されたりして、いやお前どこで見てたんだよとCommで突っ込んだりと、必ずしも悪い関係ばかりでもなかった。もちろん翌日には再度確保に行ったのだが。
実際90日を超えるのは簡単だったのだけど、なぜか 120日を超えたあたりから執拗に攻撃を受けるようになり、140日くらいで何度か潰えた。どうもローカルではそこそこ目立つエージェント名だったこともあり、RESの知人に聞くとローカルチャットで名指しでポータル潰しをされたりしていたようである。なんだかなあ。
最終的には GPS 位置偽装を使ったあからさまな Spoofing Account (なんせこいつ Verified ですらないのに百キロのLinkを張っていたりした)から 149 days の離島ポータルを潰され、Niantic が全く対応をしなかったこともあってゲームの不公平さに馬鹿馬鹿しくなり引退したのであった。流石にいつでも不正手段でゲームをひっくり返されると分かっていたら楽しむも何もない。
Ingress 引退後
そんなわけで約1年と数ヶ月の熱狂の後に引退したわけだけど、引退を決めたときの残念さと喪失感と開放感はあれはあれでなんとも言い難いものだった。端的には「時間ってこんなにあったのか」なのだけど、本気の時期は昼休みにエナジーバーをかじって1時間まるまる活動していたりしたのでさもありなん。ただ Sojourner を止めたときは「これで週末に無理して Portal Hack のためだけに出掛けなくて済む」という開放感が大きくて、あれはやめて正解だったと思う。
といいつつ今はポケGOをやっているのだから因果から逃れられたわけではなさそうなのだけど、イングレス時代に比べたらぬるプレイもいいところなので、やはり情熱のかかり方が違うなとは思うのだった。